私たちは兵庫県加西市を拠点に、山田錦を育てる酒米農家です
そして、ひとつの田圃からできた酒米で、ひとつの日本酒をつくる「一圃一酒」と銘打ち、
酒蔵と協働で酒をつくり、皆さんにお届けする活動を行っています

加西市は3億年前の丹波帯や超丹波帯、そして1万年前の大阪層群の恩恵を受けた粘土質の土地が広がっています
粘土質の土は米作りや豆作りに適していると言われています
そして、適度に水が溜まりやすい性質があり、大きな河川がない加西では、古人が苦労して作ったため池や野池があちこちにみられます

田圃は米を育てるだけでなく、
大雨の時は雨を受け止め、地域の生活を守る役割もあります
そして、一番大切なことは、生命をつなぐ場でもあるということです

田圃や農地は、植物を育み、動物や微生物のすみかとなり、
ため池には水草や魚が生息し、水鳥が餌を求めてとまります
小さな生きもののすみかが存在するということは、
植物や動物、そしてヒトが生きるためのの礎がそこにあるということでもあります

一方で農地整備の変化、管理が徹底したため池、そして遊休農地の増加や農薬の新たな開発など、
さまざまな変化によって、生きもののつながりが絶たれた農地やため池が増えるという現実があります

いつまでも変わらないと思っている当たり前のような光景が、
少しずつ変化しています

ワインにはテロワールという言葉があり、
その土地らしい、人間の管理を超えた自然が作り出す要素を育み酒に潤す考え方があります
米をつくること、酒をつくることと同時に、
いまある風景を守ること
それが自分たちの米作り、酒造りに還元できると思います

農家のあとを継いで間もない私たちができることを少しずつ土地に還元しながら、
加西の、そして農業の今あるこの風景を後世に引き継ぐためにも、
農業の当たり前の日々を一年を通して記録し一冊の本として纏めました

ぜひ、皆さんにご覧いただき、日本酒を味わっていただけたら幸いです

株式会社 ten